ロコ・ロンドン・ゴールドとは?
貴金属ディーリングにおいて世界でも第一人者のスタンダードバンク東京支店長池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、金取引で利用されるロコ・ロンドン・ゴールドについて、金の基礎知識の一環として、解説しています。
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今週は金の基礎知識編に戻ります。第8回「ロコ・ロンドン・ゴールドとは?」です。
第1回:「金の価値って何だろう?」
第2回:「金の比較的価値」
第3回:「金の実用的価値」
第4回:「ゴールドETFについて」
第5回:「中央銀行の金保有」
第6回:「金はどこで採れるのか」
第7回:「錬金術のもたらしたもの」
「ロコ・ロンドン・ゴールド」とは一言乱暴に言ってしまえば「ドル建てのゴールド価格」のことです。ただこの説明だけでは完全ではありません。なんとなればニューヨークの先物市場Comexもドル建てのゴールド価格であるからです。
この機会にもう少し詳しくロコ・ロンドンの定義をしておきましょう。普段我々が新聞などで「ゴールド1900ドル突破!」とか「ゴールド1500ドルを 割り込む」といった記事で読むときの1900ドルや1500ドルというのがゴールドの価格だということは誰でもわかると思いますが、この価格を正確に説明できる人はそんなにいないと思います。ドル建てゴールドの価格は、ゴールドと米ドルとの為替、すなわち交換レート(Exchange Rate)です。たとえばドル円の為替は1米ドルに対する円の対価。ではゴールドドルの為替はといえば、1トロイオンスのゴールドに対する米ドルという構造になっています。
トロイオンスと言うのは貴金属だけに使われる単位で31.1035グラムです。つまり約31グラムの金と米ドルを交換する際のレート、つまり価格ということになります。たとえば今ゴールドが1600ドルというのは、1トロイオンスのゴールドを手に入れるためには1600米ドル支払う必要がある、というこ となのです。基本的にゴールドを始めとする貴金属のドル建て価格はこのトロイオンスあたりの米ドルの価値で表されます。
もうひとつはっきりとさせておかなければならない決め事があります。それは売買したゴールドはどこで受け渡しが行われるか、ということです。同じ為替という観点でみると、たとえば米ドルはニューヨーク、日本円は東京、ユーロはフランクフルト、英ポンドはロンドン、と受け渡し場所が決まっています(もちろん実際の紙幣通貨が動くわけではなく、実際は帳簿の付け替えです)。
各通貨はその国籍や地域によって受け渡し場所が決まってきますが、ゴールドの場合は国籍はありません。しかし昔から産金国は基本的にイギリスの植民地 (南ア、オーストラリア、米国など)であり、植民地で採れたゴールドを本国のロンドンに集積し、そこから流通したことから、ゴールドの受け渡し場所はロンドンという慣習になっています。つまり、米ドルとゴールドの取引をすれば、ドルはニューヨークにある銀行のドル口座での受け払いとなり、ゴールドはロンドンの銀行にある「ゴールド口座」での受け払いとなります。
ロコ・ロンドン(Loco London)という呼び名はここから来ています。Locoは場所を表す接頭辞。英語のLocalから来ているとかラテン語から来ているとか諸説あります。もし東京でゴールドの受け渡しが行われるならば「ロコ・東京」、香港ならば「ロコ・香港」となります。実際に現物を伴った取引として、こういったローカルな取引も当然ながら存在しています。しかし、世界のスタンダード、基本となる取引はロンドンでの口座付け替えの「ロコ・ロンドン・ドル建て取引」となります。
したがって皆さんが報道でみるドル建てのゴールド価格は、たいていこの「ロコ・ロンドン・スポット・ゴールド価格」ということになります。このゴールド・米ドルの為替は、ドル・円やユーロ・ドルなどのほかの通貨ペアと同様に基本的に24時間世界中で取引されています。
ロコ・ロンドン市場といったときによく勘違いするのですが、これは物理的にロンドンに市場があるわけではありません。一日はオセアニア・アジアから始まり、欧州、そしてニューヨークと太陽とともに取引の参加者が変わっていくだけの話です。東京でもシンガポールでもロンドンでもニューヨークでもロコ・ロン ドン・ゴールドは取引されているのです。また「スポット」の意味するところは、取引日の2営業日に決済なされるという意味です。
最初に触れたようにドル建てのゴールド価格にはもうひとつ「コメックス価格」があります。トロイオンス当たりの米ドル建てで、形はロコ・ロンドンとまったく同じなので混同されやすいのですが、こちらはニューヨークの先物取引所Commodity Exchange(Comex)に上場された「先物価格」です。そのためスポットであるロコ・ロンドンに対して、ほぼ常に少し高い状態にあります(先物がスポットよりも高い状況のことをコンタンゴ[Contango]といいます)。マスコミでは未だにこの二つを混同しているところがあるので、要注意です。 Comexの価格は先物取引所での先物取引価格であるのに対して、ロコ・ロンドンは二者間のスポット相対取引(OTC)です。インターバンクのマーケットで地球の回転に合わせてほぼ24時間取引されています。
ゴールドの取引においては、このロコ・ロンドン価格がすべての基礎になっていると言っていいでしょう。たとえば東工取の先物の理論値の計算や東京でのキロバーの価格もこのロコ・ロンドン価格をベースにして計算されます。ひいては一般投資家が貴金属商の店頭で買う小売価格もその大もとはロコ・ロンドン金価格なのです。
以上
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