【金投資家インデックス】高インフレにも関わらず金投資への新たな興味が1年ぶりの低さへ 2022年9月8日 木曜日 15:24 生活費高騰が金のインフレの魅力を打ち消しているようです。 金への投資需要は通常夏の間減少しますが、2022年も例外ではありませんでしたとブリオンボールトのエイドリアン・アッシュは述べています。 しかし、生活費の高騰は、個人投資家や貯蓄者が将来のために蓄えておく可処分所得の減少を意味します。そのため、究極のインフレヘッジとしての歴史的にも認められている金にもかかわらず、ブリオンボールトの主要市場である西ヨーロッパと北米では、貴金属投資への新たな関心がここ1年以上の中で最も低いものとなっていました。 既存の地金所有者の3人に1人は、2022年半ばの調査で、新規投資を減らすか止めるか、あるいは生活費捻出のために資産や貯蓄を取り崩さなければならないと回答しています。 オンラインとスマートフォンで現物金銀地金市場を提供し、175カ国から10万人以上のユーザーが34億ドル(4750億円)の金、銀、プラチナ、パラジウムを保管しているブリオンボールトを利用する新規顧客数は、先月に7月から9.8%減少していました。 そして、前12カ月平均からは21.6%減少し、2021年7月以降で最も少ない数字となっていました。 米国とドイツの低迷は、8月の新規投資の減少をもたらし、これらの国々の新規地金購入者数は、それぞれ前12ヶ月平均から46.5%と38.5%減少し、ブリオンボールトでは2022年1月と2019年2月以来の最も少ない数字となっていました。 英国の新規顧客数は12ヶ月平均から15.5%減少したのに対し、フランスで13.3%、イタリアで20.4%増加していました。 8月のドル建て金相場は、FRBの更なる急速な利上げ観測から、米国通貨が外為市場で20年ぶりの高値に急騰したことで、2.1%下落し、5ヶ月連続の下落となっていました。 しかし、月平均では、ドル建ての金価格は1.7%上昇し1765ドルと、3月以来の上昇となり、ユーロ建ての金価格は1741ユーロと、7月の6ヶ月ぶりの安値から2.1%上昇し、ポンド建ての英国金価格は1471ポンドと1.5%の上昇となりました。 ブリオンボールト全体では、8月に金投資を開始もしくは追加した人の数は前月比27.8%減となり、売却した人の数は9.4%増となっていました。 その結果、金投資家インデックスは、13ヶ月ぶりの高水準であった7月から2.8ポイント下げて54.0と、3月以来の低い数値となっていました。 金投資家インデックスは、月間で金を売却量よりも多く購入するネット購入者数と、購入量よりも多くの売却を行ったネット売却者数が完璧に一致した場合に50.0となるように設定されています。2020年3月に新型コロナウィルス感染拡大で世界で移動規制が起きていたコロナ危機当初には、10年ぶりの高値となる65.9を記録していました。 ちなみに、ドル建ての金は年初から6%下落していますが、ユーロ建ては7%、英ポンド建ては10%上昇しています。 一方、世界の株式市場はドル建てで20%下落し、債券価格の広範な動きを示すインデックスは15%下落しています。 つまり、この夏、中央銀行による政策金利引き上げによる金利の急激な上昇を予想して株式と債券の価格が下落した一方で、金が比較的強い投資パフォーマンスを見せているのは、金利が急激に上昇を続けるというコンセンサスに疑問符を投げかけているのです。金は米国ドルベースで今年これまで取引可能な資産クラスの中で最も損失が小さく、米ドル建て以外の通貨の投資家にとってインフレ考慮後でも堅調に推移しているのです。 そして、ブリオンボールトの顧客がロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、チューリッヒから選択した場所で安全に保険がかけられて保管されている投資用金地金は、7月に記録した47.7トンから変更なく、26億ドル(3650億円)相当となっていました。 金価格と同様に、米ドル建ての銀価格も8月末に下落し、2020年9月以来の大幅な下げの月間10.6%安と急落を記録していました。 しかし、銀は先月、月間平均価格においては上昇し、7月の25ヶ月ぶりの安値から3.5%上昇していました。 そのため、ブリオンボールトの銀のネット購入者数は24.3%減少し、ネット売却者数は前月から1.9%減少したにすぎませんでした。 その結果、銀投資家インデックスは53.9となり、7月の13ヶ月ぶりの高水準から2.1ポイント減少していました。 重量において銀の需要は、5ヶ月連続でプラスとなり、ブリオンボールトのユーザーによる購入量は売却を差し引いて3トン以上となり、顧客の保有量は1,253トンを超え、732百万ドル(100億円)相当と記録を更新していました。 季節的な夏枯れ市場は別として、現物地金は既存の所有者の間ではインフレヘッジとしての魅力を保持しているのです。しかし、新規購入希望者にとっては、生活費高騰による可処分所得と貯蓄可能所得の減少によって打ち消されていると思われます。