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【金投資家インデックス】記録的な高値の中で金の利益確定売却は鈍化する

金購入者数は、過去4年で最も少なく、銀においては13年となっていました。
 
記録的な金価格の高騰により、個人投資家は再び貴金属を購入する量よりも売却する量の方が多くなっていると、世界でも有数なオンラインの貴金属市場を提供するブリオンボールトの最新のデータで明らかとなりました。
 
しかし、価格の急騰が既存投資家の売りに拍車をかけた銀とは異なり、2024年を目前にして、金融システムと地政学的リスクが高まり続けているため、金の利益確定のペースは鈍化しています。
 
実際、金価格が史上最高値を更新し、銀行の貯蓄は2008年の世界金融危機以来の高金利を提供している中で、現物地金市場で感じているのは、利益確定の売却が増加していないkとです。
 
大多数の個人投資家が行う金を購入して長期間保有するというアプローチに比べれば、金地金の確定売却は依然として少数派と言えます。中国が主導する記録的な中央銀行の金需要と相まって、投資家が2024年を見据えて、景気後退、中東での紛争が悪化しないまでもウクライナでの戦争の継続、さらに米国、インド、英国での選挙などのリスクが高まっていると見ているため、金価格の底上げがサポートされていることを示唆しているようです。
 
そのような中、11月のブリオンボールトにおける金地金の購入者数は、価格がトロイオンスあたり40ドル上昇して月末価格の最高値の2035ドルを記録する中で、10月から15.6%減少し、4年ぶりの低水準となっていました。
 
しかし、売却者数は購入者数よりも急激に減少し、10月の7ヶ月ぶりの高値から36.8%減少していました。その結果、金地金現物への投資家のセンチメントを示す金投資家インデックスは51.9まで上昇することとなりました。
 
金投資家インデックスと月末金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
50以上の数値は、購入者数と売却者数のバランスが一致したことを意味します。金投資家インデックスは、貴金属価格が当時3年以上の最速ペースで急上昇した2019年6月に10年ぶりの低水準となる49.1を記録し、2020年3月に新型コロナウィルス感染症によるパンデミックが世界的に広がった際に10年ぶりの高水準となる65.9を記録しました。
 
そのピークと比べると、最新の数値は明らかに弱いものです。より顕著なのは、10月の9ヶ月ぶりの低水準からわずかに1.1ポイントの上昇ですが、これは6月以来の強い上昇であり、過去12ヶ月で4番目の強さであったことです。
 
つまり、ゴールドラッシュは起きていないということです。シリコンバレーバンクの破綻後の米地域銀行危機時はさておき、この1年が常にこの傾向であったわけではありません。そして、11月は金価格がさらに上昇したにもかかわらず、投資家の金売却は鈍化していました。しかし、12月初旬の金価格の急騰は、利益確定売却がほぼ出尽くしたと言うには時期尚早であることを証明していました。
 
ブリオンボールトは、コインショップや株式市場に上場している金ETF商品とは異なり、24時間365日営業しているため、今回のアジア取引開始時の金価格の3.5%の急騰時には、売却者数が購入者数を上回り、売却量が購入量をほぼ7割を超える規模となっていました。
 
これは、過去3ヶ月のパターンを継続させるもので、2019年半ば以降で最も長く続いている傾向です。
 
そして、先月は売却量が購入量を上回り、顧客の金地金の保有量は、過去最高であった8月末から2.1%減少し、過去20ヶ月で最小の47.2トンとなったものの、ブリオンボールトの顧客が保有する金地金の評価額は、1.4%上昇し、過去最高の31億ドルとなっていました。
 
それとは対照的に、11月に銀はドル建て価格が7.8%急騰する中で利益確定の売却が加速して4月以来の高い数値となりました。そこで、ブリオンボールトの顧客は、14.5トンネットで売却し、その総保有量は1.1%減の1,229.1トンとなり、19ヶ月ぶりに減少し、2022年10月の過去最高値を3.0%下回っていました。
 
しかし、ここでも金と同様に、顧客が保有する銀の評価額は増加しており、11月に6.6%増の9億8,800万ドルとなり、過去7ヶ月で最高となっていました。
 
銀投資家インデックスと月末銀価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
しかし、11月の銀価格の急騰で、2021年7月以来初めてトロイオンスあたり25ドルを上回り、購入者数と売却者数のバランスを大きく崩しました。
 
銀の購入者数は10月から45.9%減少し、2010年8月以来の少なさとなっていました。その一方で、売却者数は7ヶ月でもっと高い水準へと、57.8%増加していました。
 
そこで、銀投資家インデックスは5.2ポイント下げて、2020年10月以来の急落で、46.4と過去最低を更新していました。
 
ここで学べることはどのようなことでしょうか。
 
金と銀の価格上昇は、急騰であれ、高値であれ、その両方であれ、購入を促すことなく、利益確定売却を継続させています。しかし、その売却自体は僅かなものであり、11月の価格上昇と比較しても鈍いもので、ブリオンボールトの顧客の保有する貴金属の評価額は、過去最高の41億ドルとなっていました。
 
貴金属投資は、短期的には利益を得ることができるものである中、購入し保有し続けるというものが主な傾向であるということです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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