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【ブリオンボールト半期アンケート結果】2025年の金価格予想は2538ドル

民主的な選挙ではなく地政学的リスクが金価格を動かしているようです。
 
民主主義は忘れなさい、とブリオンボールトのエィドリアン・アッシュは述べています。
 
地政学的リスクが、2025年までに金価格を過去最高値に押し上げる。
 
誰が言っているのでしょうか?
 
ブリオンボールトの数百人のユーザーが、今年6月下旬に実施したアンケートでこのように回答しています。
 
ブリオンボールトでは、2014年12月より半年に一度、顧客の9割が西欧と北米に在住しているブリオンボールトを対象に、ウィークリーレポートの購読者へ、貴金属投資の動機、懸念、そして金地金価格の見通し等のアンケートを取っています。
 
このような貴金属をポートフォリオに組み込んでいる欧米の個人投資家を対象とした調査としては、規模において最大のもので、最も長期間行われるものと言えるでしょう。
 
今夏の世論調査は、2024年下半期の見通しについて尋ねるもので、6月12日から25日まで実施しました。そして、英国の776名のユーザーを含む、ブリオンボールトの世界の顧客ベースから1,665名の回答を得ました。
 
そして、回答者の平均は、金地金価格が2024年に既に史上最高値を更新した後、年末までに更に11.2%上昇するという予測で、2025年の年明けとともに、史上初めてトロイオンスあたり2500ドルを突破するというものでした。
 
正確には2583ドル。これは、ブリオンボールトのユーザーは2023年の金地金価格を正確に予測したことからも、予定より6ヶ月早いとは言え、2024年の通年の金地金価格の上昇を正しく予測したことを考えると、価値のあるものであるように思われます。
 
ブリオンボールトの顧客による2025年年初の価格予想 出典元 
 
それでは、政治についてはどうでしょうか?
 
今年は、民主的な選挙が数多く行われます。それは、インドからウルグアイ、イランから米国まで、2024年には20億人以上の人々が、自分たちが選んだ指導者に投票をすることになります。
 
今年の選挙の多くでは、数多くの予想外の結果を引き出しています。
 
インドではナレンドラ・モディ首相が過半数を失いました。メキシコでは初の女性大統領クラウディア・シャインバウムが選出されました。エマニュエル・マクロン大統領は6月の欧州議会選挙で大敗し、「極右」派を困惑させるためにフランス国民議会の解散総選挙を招集しました。
 
しかし、その代わりに第一回選挙では記録的な投票率で再び惨敗を喫していました。
 
しかし、金融市場がこれに対してぐらぐらと揺れ動く一方で、インドのSENSEXはすでにモディの選挙ニュースによる急落を回復し、史上最高値を更新しています。(まさに神のお告げが予言したように。)メキシコ通貨と株式市場の急落は、すでにより広い地域が困難な状況であったことをさらに広手下います。(メキシコ・ボルサ指数は、シェインバウム大統領の同じく左翼的でよりポピュリスト的な前任者アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏の下で、2024年初めに過去最高値を更新していました。)フランス国債の利回りも、先週末の第1回投票でルペン氏の国民集会が勝利した後につけた8ヶ月ぶりの高値から緩和しており、CAC40指数は債券価格とともに上昇しています。
 
多くのメディアが民主政治の方向性に驚いているように見えますが、実際のところ、金融市場、とりわけ安全資産である金は、上記の「衝撃的な」出来事にはほとんど動かされていませんでした。
 
先週の米大統領討論会で前大統領のドナルド・トランプがジョー・バイデン大統領に圧勝しても、金地金価格が動かなかったようにです。
 
このことは、2016年の英国のEUからの離脱を問う国民投票の結果とは対照的です。この時、金は6時間以内に英ポンド建てで22%急騰し、主要経済国の株式市場で構成されるMSCIワールドインデックスは対ドルで4.9%下落していました。また、同年11月にトランプ氏が大統領選で初勝利を収めたニュースとは明らかに一線を画しています。トランプ氏が大統領に就任した翌年1月には、S&P500が6%以上上昇し、2017年の12ヶ月のうち1ヶ月を除く全ての月で上昇するという、過去にもそれ以降にも(現段階まで)達成されたことのない快挙を成し遂げ、金は対ドルで6%急騰した後に大きく下落していました。
 
その違いとは?一言で言えば「ショック」と言えるでしょう。
 
英国のEU離脱とトランプ大統領就任は2016年のコンセンサス予想ではありませんでした。それに対し、2024年には、国民連合(RN)が10年以上にわたってフランス票のシェアを伸ばしており、メラニア・トランプはファーストレディとしての初仕事として、新しいカーペットやカーテンの採寸を前回の情報を基に行っていることでしょう。
 
さらに言えば、2020年代に地政学的な衝撃が容赦なくもたらされ続けているおかげで、今日の政治的な「衝撃」が起こる確率は驚くほど低いのです。
 
コロナ危機時のロックダウンから2桁近いインフレまで、ロシアのウクライナ侵攻からハマスがイスラエル国境を越えて押し寄せてくる(そしてイスラエルはそれに応じてガザを破壊する)まで、有権者も金融市場も予想だにしなかったことが次々と起こっています。
 
その後、フランスの有権者の間で「極右」への傾倒が問題になるでしょうか?あるいは、有罪判決を受けた重罪犯が米大統領選に勝利したことが「衝撃」となるのでしょうか?
 
しかし、最新の調査結果によれば、金にとって政治的リスクはまだ重要であるようです。しかし、民主的に行われる選挙ではないとのことです。
 
英国の投資家の半数以上(52.6%)が、英国の総選挙は金価格に影響しないと考えています。また、11月に行われる米国の選挙も、5分の2(40.7%)のアンケート回答者が金価格には影響を与えないとしています。
 
 2024年後半の金価格の方向性を左右するのは、国内の民主主義的な投票とは対照的に、異なる国、地域、同盟間の政治と、世界有数のオンライン貴金属市場を利用している個人投資家がアンケートで答えています。
 
金価格に影響を与える要因に関するアンケート結果 出典元 ブリオンボールト
地政学リスクは、現在から新年にかけて貴金属価格を牽引する第一の要因であると考えられています。
 
この夏、全回答の29.7%を占めた地金価格を動かすと要因の地政学リスクは、ブリオンボールトの年2回の調査において、2020年の開始以来初めてトップに立ちました。
 
地政学リスクに次いで、5人に1人の投資家(20.0%)が、現在から新年にかけての金価格に最も大きな影響を与えるのは、金の需要であると回答しています。
 
これは、ブリオンボールトの10年に渡る調査の中で、市場のファンダメンタルズ(上のグラフで需給と表示されている部分)が最も強いものであったことを示しています。これは、新興市場の中央銀行による絶え間ない金購入に加え、中国の消費者による金購入が急増しているためです。
 
そのため、これまで20回の調査で13回第1位に選ばれている「金融政策」は、2019年の新年以降で最も低い第3位(17.1%)となっていました。
 
結論は?
 
今年の世界で多く行われる選挙は、世界人口の半分を占める国々の政治情勢を揺るがすかもしれません。しかし、安全資産である金にとっては、それらの選挙自体が価格を動かすことはないだろうということです。
 
さらに、これらの民主主義国家で金融政策を決定している独立した中央銀行(選挙で選ばれた指導者たちによって選ばれていることを忘れてはならないですが)は、金や他の貴金属の価格に、過去5年間で最も影響を及ぼしていません。
 
もちろん、金は他の資産のパフォーマンスが悪くなるときに良くなる傾向があるため、地金への投資はしばしば暗い時代と結びついています。現在進行中のウクライナでの戦争、ガザでの虐殺(そしてそれに拍車をかけた虐殺)、台湾をめぐる中国と米国の間の緊張の高まり、さらに中国と東シナ海や南シナ海に面する多くの国々との間の緊張の高まり、これらすべてからも、地政学リスクが投資家の投資判断時に重要要因となっていることを意味しています。
 
そして、金を取引する投資家が2025年年初にトロイオンスあたり2500ドルを超える記録的な価格を目指すと考える中、民主主義的選挙、つまりは政治リスクが世界に与える影響が、地政学リスクを上回るほど暗いことはないいということです。
 
注:これは、投資家が地金を買うことによって国内政治に反応しないということを意味するものではありません。例えば、フランスではこの春、2021年に入ってからのどの四半期よりも多く投資家が貴金属への投資を開始していました。ルペン氏の国民連合(RN)が議会の過半数を目指すという「ショック」の中、ブリオンボールトにおける新規顧客数は、かつて金地金の最大の西欧投資市場であったドイツと比較しても、10年以上ぶりにその数を上回っていました。
 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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