金市場ニュース

デフォルト不安の中、独り買われる“金”

丸紅経済研究所代表柴田明夫氏が、コモディティ専門情報サイトのcommodity-board.comで、昨今史上最高値を更新し続けている金価格の背景を解説しています。なお、このレポートは先のサイトで7月25日に掲載されたものです。

********************

米国政府の債務残高上限引き上げ期限が8月2日に迫るなか、ニューヨーク金(期近)が終値で1オンス=1600ドル台に乗せ、連日史上最高値を更新する勢いである。

今年1月に1400ドル台乗せからスタートした金は、わずか半年で200ドル上げたことになる。5月2日に1576ドルの史上最高値を付けてから、1470~1480ドル台までの調整が3回(5/5、5/17、7/1)あったものの、いずれも1割弱の調整に止まったことで、むしろ1500ドルの下値支持線が固まったといえよう。

7月に入って金が1600ドルを突破してきた背景には、ギリシャ債務危機再燃に伴うユーロ圏の財政不安と米国政府の債務引き上げ問題という、2つの信用不安がある。

この内、ユーロ圏債務問題については、ギリシャに対しEU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)が7月21日、1090億ユーロの際支援を実施。民間投資家からも約500億ユーロのギリシャ国債への再投資が加わり、ひとまず資金繰りはついた。

喫緊の課題は米国の債務問題だ。オバマ大統領は5月31日、米政府の債務残高の法定上限を2兆4000億ドル引き上げ、16兆7000億ドルとする法案を提出した。期限は8月2日だ。ちなみに、米債務残高は5月16日に現行の上限である14兆2940億ドルに達している。これまでは、連邦職員退職金などから事実上資金を流用することでデフォルト(債務不履行)・リスクを回避している状態である。

米国政府の債務上限の事実上の引き上げ期限が迫っているにも関わらず、いまだ民主・共和両党での合意には至っていない。焦点は、債務上限引き上げとリンクした財政赤字の削減策と増税の規模にある。特に、増税を巡っては、共和党は強硬姿勢を維持している。

新たに国債を発行できなくなればデフォルトに陥ることになる。ただし、市場では期限までには合意が成立し、米国債のデフォルトは回避されるとの見方が大勢のようだ。

実際、7月に入ってからの米国の長期金利は3%を割り込む水準に低下するなど、これまでのところ米国債のデフォルト・リスクはほとんど織り込まれていない。 しかし、今回デフォルトが回避されたとしても、米景気が停滞色を強める中、デフォルト・リスクは残り続けることになるし、米国債の格付け引き下げの可能性がでてきた。

ここにきて米国経済の減速感が強まっている。7月29日に発表される予定の4-6月期の実質GDPは、前期比年率2.0%前後と1-3月期の同1.9%に続いて、低い伸びにとどまる見込みである。雇用鈍化、ガソリン高、インフレ、住宅市場の低迷、東日本大震災の影響などが主な要因だ。6月の非農業部門雇用者数は、市場予想を下回り、5月に続いて低い増加幅にとどまった。失業率も9.2%と4月9.0%、5月9.1%から、3カ月連続で上昇した。 雇用回復の遅さには、循環的な要因とは別に、労働参加率の低下、失業期間の長期化等、構造的な問題も存在する。住宅市場も、09年中頃の景気回復局面入りから2年近く経つにも関わらず、新築を中心に改善がみられず低迷が続いている。住宅価格も10年中頃から低下傾向にあり、S&P住宅価格の先物を見る限り、市場の底入れは2012年春頃となりそうだ。

こうした景気鈍化に追い打ちをかけるのが、連邦債務上限の引き上げ合意に関わる歳出削減や増税である。今後、デフレリスクが再浮上し、景気減速傾向が強まれば、バーナンキFRB議長が示唆する通り、追加的な金融緩和策第3段(QE3)の可能性も出てこよう。いずれにせよ金は、資金のリスク回避先として注目されることになろう。

 

(図1)ニューヨーク金と米ドルの推移

(出所)筆者作成

(図2)

(出所)米財務省、米行政管理予算局より筆者作成

******************

金の購入をお考えですか。英国女王賞を受賞したオンライン金取引において世界一の実績を持つ、BullionVaultをお試しください。

柴田明夫氏は、丸紅経済研究所代表。1976年東京大学農学部卒業後、丸紅に入社。鉄鋼第一本部、調査部を経て、2000年に業務部 経済研究所 産業調査チーム長。01年に丸紅経済研究所主席研究員。03年副所長、06年所長。2010年4月より現職に。

長年のコモディティ関連業務で培われた知識と視点でコモディティマーケットの体制を見渡す記事をcommoditiy-board.comに週一回掲載中。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

グーグルで優先する情報源として追加

 

 

貴金属市場のファンダメンタルズ