コモディティ価格の調整は一時的
金価格が史上最高値を上げるなど、今月初めにコモディティ価格は軒並み大きく上げた後、10月の初旬のレベルまで下落しました。これらのコモディティ相場の大きな動きを、丸紅経済研究所代表柴田明夫氏が、コモディティ専門情報サイトのrigoo.netで、下記のように解説しています。
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今年の7月以降騰勢を強めていたコモディティ価格は、11月10日に足元のピークを付けて後、一転して急落となった。金が1オンス=1423ドルの史上最高値から17日には安値1330ドルを付けるなど1週間で約1割、100ドル近く暴落したほか、原油も1バレル=88ドルから80ドル台まで1割下落。銅、穀物、砂糖なども大きく売られる格好となった。ただ、これは数カ月にわたる上昇の中で、一たんポジション調整が必要になっていたところに、為替市場でのドル高と新興国の金融引締めが、利食い売りの機会を与える形となった。
米連邦準備銀行(FRB)は11月2-3日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、2011年6月末まで向こう8ヶ月間にわたり6000億ドルの米長期国債を追加的に購入する量的金融緩和を決定。翌日から米国債の買い入れを始めたものの、その中心が残存期間5~6年物であり、市場が期待していた30年物長期国債ではなかった。このため市場では長期債が売られ金利が上昇⇒日米金利差が拡大⇒為替市場でドル高・円安⇒コモディティ売り、が進んだ。また欧州では、アイルランドやスペインの財政懸念からユーロが対ドルで下落したこともコモディティの売りを誘った。また、中国では、10月の消費者物価上昇率が4.4%と、9月の3.6%からさらに上昇。インフレ警戒圏の3%を大きく上回ったことで、再利上げ観測が広がり⇒景気減速⇒原油、銅、大豆などのコモディティ輸入減少といった連想が働いた。
しかし、今回の下落は騰勢一服であって、むしろ中国など長期的に資源確保が必要な国にとっては絶好の買い場となるだろう。少なくとも、リーマン・ショック直後の商品市況暴落とは性格が違う。ちなみに、2008年9月のリーマン・ショック時は、これを契機に世界的な信用収縮が起こると、企業、家計の間に手持ちの現金を厚くするため、売れるものは現金に換えておくという「現金化」行動が強まった。企業は、住宅および自動車・家電などの耐久消費財の生産調整、中長期的な設備投資の見直し、原材料の在庫調整、製品在庫の投げ売りなどに走った。結果としてコモディティ市場では、一時的にあたかも需要が消滅した状況が生まれ、真空状態の中を価格が暴落した。さらに、企業の生産調整は雇用調整へと波及し、家計は生活防衛のため住宅購入や耐久消費財の消費を削減したことで、耐久消費財の減産が強化されるなど負のスパイラルが生じた。2009年の世界経済は戦後初めてマイナス成長に陥った。
これに対し、今回のコモディティ価格の下落は、あくまでも世界経済の回復過程での調整である。IMFが10月に発表した世界経済見通しによると、2010年の世界経済は4.8%成長の見通しだ。7月時点の予測からは0.2ポイント上方修正されている。ただ、その中身は先進国の成長が2%台に対し、新興国が7%台と二極分化している(図表1)。いわゆるデカップリングで、いまや世界経済は中国、インド、ブラジルなどの新興国が牽引する格好となっている。
(図表1)

なお、中国の7-9月期成長率は前年同期比9.6%増と、4四半期ぶりの10%を割り込んだ(図表2)。しかし、これは目標とする8%成長にソフトランディングする動きであって、景気失速の始まりではない。2010年通年でみれば10%の高成長を維持するとみられ、実体経済の勢いは強く「保八(8%成長維持)」に落ち着かせること自体が中国では難しいのである。
(図表2)

こうしたなか、中国では2010年10月に開催された共産党の5中全会で、第12次5ヵ年規画(2011~2015年)が採択された。現在の第11次5カ年規画(2006~2010年)との違いは、「強国(国をより強くする)」から「富民(国民を豊かにする)」への方針転換である。
この背景には、ここ数年の高度経済成長の結果、
①労働分配率の低下、
②都市部と農村部の所得格差の拡大(都市部:農村部の貧富格差は、1997年3:1⇒2009年同4:1に拡大)、
③農村部の社会保障整備の遅れなど、
社会安定のためにも看過できない格差が広がってしまったことがある。
こうした問題に対する対策として、12次規画では「十大重要課題」として、
①内需拡大を促進して、比較的早い経済成長を維持、
②農業の現代化(近代化)を推進し、社会主義新農村建設を加速、
③現代産業構造を発展させ、産業の競争力を向上、
④地域の協調発展を促進し、都市化を積極的に推進、
⑤省エネ・環境友好型社会の建設を加速、
⑥科学教育興国・人材強国戦略を強化し、革新的国家の建設を加速、
⑦社会建設を強化し、基本サービス体制を強化、
⑧文化の大いなる発展・繁栄を推進し、国家の文化力を向上、
⑨さらなる大きい決心と勇気を持って、各分野の改革を全面的に推進、
⑩Win-Winの対外開放戦略を実施し、対外開放の水準をさらに向上、
を掲げている。
中国は持続的成長に向けて舵を切り始めた。コモディティ市場においても息の長い需要拡大局面が続くとみられる。
(以上)
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