LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)の仕組み#
LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)は、ロンドンのブリオンバンクの大量の売買注文の中から共通した取引価格を見出し決定されます。これは、午前10時半と午後3時に行われます。
LBMA金価格(旧ロンドン値決め)に参加しているブリオンバンクは、それぞれの顧客の指値注文と自社の注文を取り扱っています。そのため、LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)が決定するまで、誰もどの価格になるかは知ることはありません。
LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)は、参加している全てのブリオンバンクの買い注文の合計と売り注文の合計が合致する価格で決定されます。
LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)のOpening price(オークションの始まりの価格)は、この価格を管理・運営するICE Benchmark Administration (IBA)の専任チームが、それまでのスポット価格や世界の市場の価格を基に決定し、LBMA金価格(旧ロンドン金値決め)の過程を開始します。
参加するブリオンバンクの注文にバランスがとれた際に、価格が金の値決め価格と決定します。最も一般的には、購入者と売却者はバランスがとれていません。そのため、提案された価格を購入者が多ければ引き上げられ、売却者が多ければ引き下げられて調整されます。
価格の引き上げによって次のようなことが起こります。
- この価格が、既にLBMA金価格(ロンドン旧値決め価格)を決定する注文の集まりの中にある、指値買い注文価格を上回り、これらの注文がこの値決めのための注文の集まりから外れ、需要を減少させることとなります。
- この価格が引き上げられることで、更なる指値売り注文がこの値決め価格を決定する注文の集まりの中に入って来ることとなり、供給が増加します。
価格の引き下げによって次のようなことが起こります。
- この価格が引き下げられることで、更なる指値買い注文がこのLBMA金価格(旧値決め価格)を決定する注文の集まりの中に入ってくることとなり、需要が増加します。
- この価格が、既にLBMA金価格(旧ロンドン値決め価格)を決定する注文の集まりの中にある、指値の売り注文価格を下回り、これらの注文がこのLBMA金価格(旧ロンドン値決め)のための注文の集まりから外れ、供給を減少させることとなります。
調整された価格で、LBMA金価格(旧ロンドン値決め)に参加している銀行はLBMA金価格(旧ロンドン値決め価格)を決定することを再度試みます。そしてこの試みは、注文のバランスがLBMA金価格(旧ロンドン値決め価格)に反映されるまで繰り返されます。
この方法により、集められた大量の市場の注文は一定の価格で成約されます。そして、ここで集められる注文の量は大量であることからも、LBMA金価格(旧ロンドン金値決め)は、ここで売買を行う人々にとって、公正な競りの方法であると認識されています。
顧客も、頻繁にこの指値買い注文価格よりも安く、また指値売り注文価格よりも高く取引を行っています。
ここにおけるスプレッドは狭く、トロイオンスあたり20セントが購入者のLBMA金価格(旧ロンドン値決め価格)に加えられます。このようにして、LBMA金価格(旧ロンドン値決め)を継続する事ができるように、LBMA金価格(旧ロンドン値決め)参加メンバーが利益を得ているのです。
LBMA金価格(旧ロンドン値決め価格)は、広く新聞、インターネット、テレテックスなどで公表されています。そして、金の評価を即座にできる有効な指標です。インターネットでは、ロンドン貴金属市場協会や、ワールド・ゴールド・カウンシルのサイトでご覧いただけます。
ロンドン貴金属市場協会の副会長で、バークレイズ銀行のコモディティ部門のダィレクターであるマーティン・ホワイトヘッド氏は、旧ロンドン値決めに関し、次のようにコメントしています。
「通常、10分から15分の時間で合意に至ります。しかし、時として30分から1時間かかることもあります。値決めに要する時間が最も長かったのは、ブラックマンデーの1987年10月19日でした。米国株式市場が評価額で23%急落したこの日、金値決め価格(ロンドン・フィキシング)は、2時間15分かけて合意されました。」
LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)を利用する場合、価格の発表を待たなければならないこと#
顧客がLBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)が公表されるまで、支払額が分からないこと、そして金の受領も待たなければならないことは、問題であると考えられる場合もあります。それは、このために、購入者が市場の動きによる取引の機会を利用できない可能性があるためです。しかし、この市場の動きは、取引を行っている者にとって結果的に良いもの、もしくは悪いものである可能性もあります。
しかしながら、このLBMA金価格(旧ロンドン値決め価格)が大量の注文を競りにかける形で合意されていることからも、公正な価格が支払われ、受領されたと一般的に理解されています。
LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)が公正であるかについて?#
それでは、LBMA金価格(旧ロンドン金値決め)は可能な限り公正なものなのでしょうか?この質問は、簡単に答えられるものではありませんが、ここで市場の傾向はある程度見ることは可能です。
LBMA金価格(旧ロンドン金値決め)は、ICE Benchmark Administrationによって管理・運営されています。
動いている市場では、ファンドマネージャーや機関投資家は、群れになって動くことを好み、市場へ購入者と売却者を波のように入れてきます。
それぞれのLBMA金価格(旧ロンドン金値決め)参加企業は、顧客のエージェント(代理人)として顧客に代わり、またはプリンシパル(本人)として顧客と直接金取引を行ってます。そのために、もしこの一つの参加企業が、18の買い注文と4つの売り注文を顧客から受けた場合、同様にLBMA金価格(旧ロンドン金の値決め)に参加している他の参加参加企業も、似たような注文状況で買い注文が上回っている可能性があります。そのために、参加企業は市場のバランスがとれ、大量な買い注文のために価格が上昇するまで、売り注文を急いで入れることはないでしょう。
それでは、これは実際にどのような意味を持つのでしょうか。LBMA金価格(旧ロンドン金値決め)の参加企業が、外部からの注文がある一定の傾向があることを読み取れる力量があれば、ここで自社の収益を高めることが可能であることは誰もが理解していることです。これは、顧客からの注文傾向を見ることができる、他のどのような金融取引のプリンシパルも、同様な位置にいます。この顧客の注文傾向は、市場の傾向を語る役立つ情報です。
LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)を利用するのは誰かについて?#
LBMA金価格(旧ロンドン金値決め)に2015年4月20日現在で、下記の企業が参加しています。
- バークレイズ
- HSBC
- ソシエテ・ジェネラル
- カナダのスコシアバンクの子会社のスコシア・モカッタ
- UBS
- ゴールドマン・サックス
- JPモルガン
LBMA金価格(旧ロンドンの金値決め価格)は、精錬会社や金鉱会社などの大規模な金の所有者が、その在庫の評価をする際に利用します。
そして、イングランド銀行のような多くの中央銀行は、金準備の評価をこの価格で行います。多くの金貨販売店や宝飾品製造業者もまた、このLBMA金価格(旧ロンドン値決め価格)を利用して日々価格を調整しています。
更に、LBMA金価格(旧ロンドン値決め価格)は、金の先物、スワップ、オプションなどの派生商品市場でも利用されています。
LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)で取引をすることができるかについて#
残念ながら、一般の人々は、LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)を利用することができません。それは、大部分の専門業者は個人投資家が口座を開設することを望まないからです。また、取引の最小単位は、今年3月20日にLBMA金価格へと旧ロンドン金値決め価格が移行するまでは、400トロイオンス(現在は1トロイオンス)というグッドデリバリーバーであったため、この規模の取引ができる個人投資家が少なかったためです。
しかし、個人投資家がこの価格で取引を行いたい場合は、ブリオンボールトを通して行うことができます。そのためには、まずオンラインで口座を開設し、少なくとも1グラムの取引に十分な資金を送金する必要があります。なお、売買時の取引手数料は0.8%です。金の値決め価格による取引の詳細については、こちらのヘルプページをご覧ください。
もし、金を購入することをご希望であれば、ブリオンボールトのウェブサイトをご覧ください。
- ブリオンボールトウェブサイトへ
- ブリオンボールトで口座を開設し、4グラムの無料の銀を受領
LBMA金価格(旧ロンドン金値決め価格)の歴史#
LBMA金価格へ移行するまでのロンドン金値決め価格は、第一次世界大戦終了後、1919年9月12日に始まりました。
2004年までの85年間、ロンドン値決めに参加するメンバーは、この参加メンバーの議長であった、N・M・ロスチャイルド社の事務所があった、ロンドンの金融街(City)のSt. Swithins Laneで実際にミーティングを行っていました。
しかし、ロスチャイルド社は、「ロンドンのコモディティ市場からの収入は、過去5年間に全体の収入に占める割合において大きく減少した。」という理由から、2004年にロンドン値決めから撤退しました。(関連記事へ)
金価格はその後2倍以上となりました。ロスチャイルド社が撤退した後は、議長職は残りの5社(スコシア・モカッタ、バークレイズ銀行、ドイツ銀行、HSBC、ソシエテ・ジェネラル)の1年毎の交代制となりました。
その後、2014年1月にドイツ銀行が商品事業縮小に伴い、金と銀の値決めから撤退する方針を示したことから、金の値決めは4社で行われていました。
同年5月には、銀値決めを運営するLondon Silver Market Fixing Limitedが、ドイツ銀行がやはり銀値決めから撤退し、値決めメンバーが2社になることから、8月14日付で銀の値決めを停止することを発表しました。そこで、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)が市場関係者にコンサルテーションを行った結果、銀値決めの代替として、トムソン・ロイターとCMEが合同で、管理機関として値決めをとりまとめることを決定しました。
その発表が行われてまもなく、金値決めも第三者機関が管理を行う方法へ移行することとなり、8月末に提案の提出が行われ、9月末にICE Benchmark Administration (IBA)が管理・運営することが決定され、2015年3月20日に新方式へと移行しました。
LBMA金価格(旧金値決め価格:ロンドン・フィキシング)#LBMA金価格がこれまでのロンドン金値決め価格と異なる点#
- 電話で行われていたオークションが電子システム上で行われることとなったこと。
- 注文等の詳細記録がシステム上保存され、監査可能となったこと。
- 価格の管理と運営が市場参加者ではないICE Benchmark Administration(IBA)によって行われていること。
- 参加企業は、これまでのブリオンバンク4行(バークレイズ、HSBC、ソシエテ・ジェネラル、カナダのスコシアバンクの子会社のスコシア・モカッタ)に加え、UBSとゴールドマン・サックスとJPモルガンの7行。
- 最小取引単位が400トロイオンスのグッドデリバリーバーから1トロイオンスへ。
- 取引入力が、顧客の注文を扱うセールスデスクと、自社の注文を扱うトレーダーデスクで異なるために、同じブリオンバンクであっても他の部署の注文内容は見ることはできなくなったこと。
- Opening price(オークションの始まりの価格)は、値決めメンバーの議長が決めるのではなく、IBAの専任チームが、それまでのスポット価格や世界の市場の価格を基に決定すること。
- 需給のバランスに応じて価格を上下に動かすことを提案する議長は、市場参加者ではなく独立した金市場の専門家であり、IBAの事務所で行われること。
- オークションの結果はICEのサイトで閲覧可能となったこと。
- LBMA Gold Priceを利用し、配信する際に、IBAとのライセンス契約は、2015年9月1日まで必要がなく、費用も発生しないこと。
- LBMA Gold Priceは、4月1日よりロンドン銀行間取引金利(LIBOR)同様に、規制当局下の世界指標となり、規制に反した場合は、法律で罰せられること。
- LBMA Gold Priceには、監視委員会(Oversight Committee)が設けられ、その委員は下記の通り。
- 金鉱会社(AngloGold Ashanti's Groupの経理責任者Rob Hayes氏、Denver Gold Groupの取締役Tim Wood氏)
- 精錬会社 Johnson Mattheyの部長でLBMAの議長であるGrant Angwin氏
- ブリオンバンクスコシア・モカッタの取締役Simon Weeks氏
- IBAのコンプライアンス責任者Emma Vick氏
- LBMAのCEOのRuth Crowell氏