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イングランド銀行タッカー副総裁が提案したマイナス金利とは

イングランド銀行タッカー副総裁がマイナス金利導入に含みを持たせたことは、今週多くの経済紙の見出しを飾るニュースとなりました。ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが、これが意味することを解説しています。

イングランド銀行のウェブサイトで、子供向けに中央銀行がいかにインフレをコントロールするかをビジュアルに説明する、熱気球のゲームのように、タッカー副総裁はマイナス金利について語っています。このゲームは、ボタンを押すことで、熱気球をバーナーで熱することで上昇させ、それを経済に例え、「バーナーで熱気球を熱して、上昇させるように、政策金利を引き下げることは、市場により多くの資金を送り込むことを意味するのです。」と説明しています。

バーナーで熱することで熱気球が上昇するように、政策金利を引き下げることで資金が市場に送り込まれたにもかかわらず、経済が拡大せずインフレが発生しなかった場合、熱気球に例えるのであれば、地面にたたきつけられることを意味します。この可能性をマイナス金利導入を肯定したタッカー副総裁はどのように考えるのでしょうか。(ちなみに、タッカー副総裁は、Libor不正操作のスキャンダルが明らかになるまでは、イングランド銀行の次期総裁と有力視されていました。)

BBCは、タッカー副総裁の提案を「信じられない(Bizarre)」とし、テレグラフ紙は、「異常な提案(Extraordinary)」としています。

「マイナス金利は、私が(金融政策委員会)に提案した一つの案です。」と、タッカー副総裁は、今週火曜日の英議会の財務特別委員で述べています。

そして、「私は、マイナス金利を設定することでどのような制約があるのかを考慮すべきであると希望します。」と続けています。

しかし、マイナス金利が導入されるとどのようなことが起こるのでしょうか。英国貯蓄者は既にマイナス金利を経験してきています。先のチャートでも分かるように、Anti-Cash(通貨と異なるもの)として知られている金の価格が、2011年夏までに、ユーロ圏債務危機と米国債格下げ時に記録的水準に急騰している際に、英国の金利は、1970年後半以来最も下げ、マイナス値となっています。

しかし、もう一度先のブリオンボールトのチャートをご覧ください。実質金利は、上昇しつつあります。そして、2008年以来4度目となる、ゼロに近づきつつあります。そのため、イングランド銀行がマイナス金利を預金準備に課すことで、商業銀行が資金の貸し出しを強制的に行わざるを得ないという、タッカー副総裁のマイナス金利の案が浮上したのです。しかし、この提案が浮上した時期に意味があると考えます。

英国政府の国債価格が下げ、利回りが上昇しつつあります。過去5年間据え置かれているゼロに近い金利は、もはや十分ではなくなっているのです。英国は、トリプルAの格付けを先週失いました。そして、10年物国債は、過去1年間で最も高い水準へと上昇しました。そのために、金価格の動きがなくなっているのです。金は、銀行に預けている資金が金利を生み出さない時に、人々は価値を見出すものであるためです。

だからこそ、タッカー副総裁の「信じられない(Bizarre)」、「異常な提案(Extraordinary)」が、新たに浮上しているのです。

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エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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